原作は山崎豊子さんの同名小説で、昭和42年(1967)に書かれたものですが…
華麗なる一族、すなわち万俵コンツェルン(財閥)にはモデルが存在するのだとか…
小説の主人公、万俵コンツェルンの総帥でもある万俵大介(北大路欣也さん)が頭取として勤める阪神銀行は神戸銀行(現在の三井住友銀行)らしいし、今回のドラマでの主人公となる万俵鉄平(木村拓哉さん)が専務として勤める阪神特殊鋼は山陽特殊製鋼がモデルのようです。
―という事は、万俵一族って、岡崎財閥をモデルにしたって事になるわけですよね。
岡崎財閥…創始者は岡崎藤吉氏です。
大正6年(1917)に神戸岡崎銀行を開業し、昭和11年(1936)には再編された神戸銀行の中核として君臨します。
岡崎藤吉氏には、2人の後継者がいました。一方は実の息子で、損保の社長を務め、参議院選挙に当選し大蔵委員長にもなった岡崎真一氏、そしてもう1人が婿養子に入り、銀行の頭取と務めた岡崎忠氏です。
となれば、イメージ的には、
岡崎藤吉→万俵大介(北大路欣也さん)
岡崎真一→万俵鉄平(木村拓哉さん)
岡崎 忠→万俵銀平(山本耕史さん)
って感じになるのでしょうか?
そして、時代背景としては、昭和40年(1965)に起こった山陽特殊製鋼倒産事件と、昭和48年(1973)の神戸銀行と太陽銀行の合併による金融再編(→太陽神戸銀行の発足)が絡んでいます。
山陽特殊製鋼倒産事件とは、社会経済史を研究するなら必ずといっていい程、重要な出来事だったりします。
何せこの事件によって、初めて「事実上の倒産」という用語が使用された画期的な事件であり、会社更生法が適用された第1号の案件でもあるわけです…
そうした関西の、神戸を舞台にしているのにも関わらず、標準語で東京チックに展開される感じ!
唐沢寿明さん主演での「白い巨塔」もそうでしたが、標準語では感情表現にインパクトが欠けますよ、ホンマのとこ!
そやから、田宮二郎さん主演の「白い巨塔」を再放送で観た時は全編を通して安心感がありました。
ましてや今回のこの作品、キムタクが出演する、ってだけでは観るべき価値は1つもなく、関西が舞台だから観てるんだ、ってのが正直なところ―
それ故に、今回も佐分利信さん主演の映画版「華麗なる一族」を改めてチェックしようと思ってます。その方が真実がありそうやし…
余談ですが…
この「華麗なる一族」の万俵大介の生涯って、似たようなシチュエーションがあったなぁーと思ったのですが、オーストリア・ハプスブルク=ロートリンゲン家のフランツ・ヨーゼフ1世に重ねちゃいますね。
長男であり、後継者であったルドルフのマイヤーリンクでの悲劇といい、帝国の崩壊といい…何となくそう感じました。
先日、思いがけず日本映画専門チャンネルで佐分利信さん主演の映画版「華麗なる一族」を観る事ができました。
個人的な感想としては、原作に手を出してから、動く映像をチェックするのなら、映画版の方が良いです。
何と言っても、佐分利信さんの演じる万俵大介の“醒めた炎”ばりの凄味、仲代達矢さん演じる鉄平のおどおどしさは絶妙です。
全体を通して言えば、万俵家が“小をもって大を制”し、得意の絶頂にいる次の瞬間、金融再編の大波が飲み込もうと待ち構えている―まるで、蝋燭の炎やマッチの火が消え去ろうとする瞬間に大きな灯火を照らして燃え落ちる様を観ている感じで好きです。
“滅ぶ”って事が如何に美しいかを改めて気付かせてくれます―
やはり、主人公は万俵大介でないといけませんね!
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