日本最初の英語教師―ラナルド・マクドナルド

嘉永元年(1848)5月7日。日本海に浮かぶ焼尻島やぎしりとうに27歳のアメリカ人青年が上陸しました。

彼の名前は、ラナルド・マクドナルド(Ranald,MacDonald)というアメリカ人で、母方がアメリカン・インディアンの部族の1つであるチヌーク族の王の血筋を引く人物でした。

マクドナルドはインディアンのルーツは日本人(→インディアンが日本からアラスカを経てアメリカ大陸にやってきた)だと信じており、日本に対する憧れの気持ちを持っていました。

また、マクドナルドが生まれ育った太平洋沿岸部地域には、日本人の漂流民たちが多く打ち上げられていた事実があり、その事も彼の「日本人ルーツ説」をより確かめようと思うきっかけとなっていました。

マクドナルドは、鎖国状態であった日本へ何とか行きたいという強い衝動が彼の運命的なものとなって、遂にその想いを遂げるため、銀行員を辞めて、捕鯨船の乗組員(水夫)となり航海の旅に着きます。

その航海途中、日本近海に近付いた際に、かねてから決心していたのでしょう、船長から譲られた下船用ボートに乗り移り、漂流という形で遭難を装い、(→例えば、不法入国ならば処刑だが、漂流者なら悪くても本国送還だろうと考えて、わざとボートを転覆させて漂流者を装ったのだとか)蝦夷地の利尻島に単身上陸、遂に念願の日本上陸を果たします。それが嘉永元年(1848)5月7日なのです。

最初、焼尻島やぎしりとうに上陸し、更に、7月1日には利尻島に上陸しますが、運上屋に20日程拘留されます。

この後、8月に入り、マクドナルドは宗谷の勤番所に移され、密入国者として20日間拘留され、8月25日に松前へ護送され、3週間以上監禁所に拘留されます。

そこから長崎に連行され、長崎奉行所で訊問を受け、密入国者として崇福寺大悲庵の三畳程の座敷牢に幽閉されます。

そんな囚われの身でありながら、マクドナルドの誠実な人柄と高い教養が奉行所の役人や周囲の人間に親近感をもたらしたようで、長崎奉行の肝入りで西山郷に開いた英語教室の教師に抜擢されるのです。

マクドナルドは、座敷牢の格子越しに、14人の若い通詞つうじに英語を教え、日本で最初の英語教師となったのです。この英語教室はマクドナルドが翌年春に送還されるまでの半年程続きます。

マクドナルドの授業は、彼が英語の発音をし、それを生徒たちが復唱するという形をとり、発音が正しければ、頷き、間違っていれば首を振るというものでした。

その中で、マクドナルドは日本人が、LとRの発音に苦戦している点を指摘しています。(→この点は、昔も現在も、日本人の、英会話レッスンでのLとRの発声の苦労を物語っていますね!)

マクドナルドは好奇心旺盛で、日本語への習得にも関心があり、耳や口・水・髪・茶といった日本語の発音を2枚の和紙に記しながら、覚えようとしました。

そして、覚えた日本語を手帳に書き込んで、日本初の英和語彙帳を作ったのです。16ページにわたる語彙帳には、約500の英単語に日本語訳が書かれていました。

また、通詞の面々は殆んどが長崎出身者でもあり、必然的に当時の長崎の人々が使っていた長崎弁なども記載されています。(下記参照)

  • Bad(悪い)=Waruka(悪か)
  • Cheap(安い)=Yasuka(安か)
  • Entertaining(面白い)=Omosroka(面白か)
  • Good(良い)=Youka(良か)
  • Large(大きい)=Ftoka(ふとか)
  • Small(小さい)=Comaka(こまか)

さて、日本で最初の英語教師として長崎で約半年間、若き通詞たちを教授したマクドナルドですが、この14人の中にペリー来航の際に主席通詞をし、その流暢な英語と教養に誰もが感心したという森山栄之助(多吉郎)がいます。

マクドナルドは、嘉永2年(1849)3月26日、長崎に入港したアメリカ艦に引き渡され、約10か月の日本での拘留生活に終止符を打ちます。

マクドナルドは、日本滞在中に観察した事を手帳に書き留めていたが、晩年、それを元に『日本回想記』を書き記しています。

また、アメリカに帰国後、アメリカ議会に「日本社会は法治国家であり、日本人は礼節正しく民度も高い」といった内容の陳述書を提出しました。

この事は、後のアメリカの対日政策の方針に少なからず影響を与えたようで、現在も評価の高い偉人として知られています。

マクドナルドは1894年(明治27)8月5日、70才で没するのですが、病床で「SOINARA(=さようなら) my dear、SOINARA」と呟いて息絶えたそうです。

彼の墓石(ワシントン州スポーキャン市郊外にある)には「SAYONARA」の文字が刻まれています。

この記事へのコメント

  • 御堂

    ETCマンツーマン英会話さま、当ブログ&記事への来訪有難う御座います。

    こちらのブログでは、日本人なら誰でも知っている偉人などには目もくれず、外国人が知っている日本の偉人や発掘&紹介すべき人物にこそ光を当てていこうと思ってます!
    2012年04月06日 22:09
  • ETCマンツーマン英会話

    スコットランド人の知人からラナルド・マクドナルドを紹介され、その存在を初めて知りました。『海の祭礼』読んでみました。よい本ですね。ブログでの紹介に感謝です。
    2012年04月06日 12:18

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