山城国人・宇治大路氏ノート(その1)

わが街・宇治―

その特産品として「宇治茶」が挙げられます。

「宇治茶」の史料上の初見は、応安7年(1374)4月1日、楽人である豊原信秋から覚王院僧正宗縁「宇治茶」を進上した、という記述があり、これが「宇治茶」の初見史料と言われています。(注1)

(注1)『日本の茶』

一日、…(中略)…覚王院(宋縁)ヘ宇治茶遣之(注2)

(注2)『豊原信秋記』応安7年〔1400〕4月1日条(『大日本史料』第6編42冊)

以降、茶の産地としての宇治の評価や評判が上がっていくなかで、天皇家や足利将軍家に献上されていた事も判っています。

なかでも、室町幕府の年中行事を記した『年中恒例記』の正月12日、2月24日の項を見ると宇治大路氏という一族が将軍家へ例年の茶献進の役を負っていた事が記されていて、幕府と深い関わりを持っていたようです。(注3)

(注3)『宇治市史の窓』〔その67〕(『宇治市政だより』1979年〔昭和54年〕11月1日発行)

(正月)十二日
一御室。青蓮院殿御参。法中少々幷宇治大路橋本已下出仕。
…(中略)…
一久喜。二桶梅つけ。梅むき。宇治大路進上之
(注4)

(注4)『年中恒例記』(『続群書類従』第23輯下 武家部6、巻第660所収)

(二月)廿四日
一御茶宇治大路奥(興)次郎三郎
(注5)

(注5)(注4)参照

また、中世末に成立した、茶道の成立期の茶法を伝える代表的な茶書の1つである『分類草人木』という書物にも、宇治の名園形成に深い関係を有した人物として宇治大路氏の名前を挙げており、3代将軍の義満が伏見に遊んだ折に、仙人に茶を進上され試飲したところこの上もなく良い茶であった事から「無上」という茶銘が興り、宇治大路氏にあわせて「七種の園」を造らせ、この七園が室町幕府指定の宇治茶園になったとあります。(注6)

(注6)『宇治茶の文化史』第一章 宇治茶の誕生 第四節 御茶師以前)

それを裏付けるかの如く、義満は応永年間の初め頃、宇治に度々訪れています。

五月十八日、御所(義満)成宇治給云々(注7)

(注7)『東院毎日雑々記』応永3年〔1396〕5月18日条(『大日本史料』第7編第2冊)

九月十四日、庚子、晴、伝聞、北山殿(足利義満)今日御出宇治、松茸御賞翫也(注8)

(注8)『迎陽記』応永8年〔1401〕9月14日条(『史料纂集』古記録編)

しかし、宇治へ訪れる一番の理由として、側室であった宇治大路氏の女性の存在があるのです。
今日於北小路前大納言(裏松重光)亭室町殿(足利義満)若君・姫君等有御祝儀、…(中略)…姫君(義満女)宇治大路息女御腹、右京大夫(細川満元)養君、三歳、御魚味(注9)

(注9)『迎陽記』応永5年〔1398〕11月21日条(『史料纂集』古記録編)

これは、義満の子女たちが日野重光てい(邸宅)において著袴ちゃっこ及び魚味まなの儀を行った事を記したものですが、その中で数え年3歳になる娘の出自として「宇治大路息女御腹」あるいは「右京大夫(細川満元)養君」とあります。

つまり、「宇治大路息女」を娘に持った宇治大路氏義満の外戚として、幕府と深い関わりを得たんですね。

その後、その褒賞というわけではないでしょうが、宇治大路氏は山城国久世郡平河郷馬方里という土地の給人として名が残っています。
久世郡内
 当給人宇治大路
 平河郷幷十二町 馬方里
土貢四百石
(注10)

(注10)『山城国久世郡内闕所注文案』(『教王護国寺文書』第785号)

さらに、その関わりは義満の子で6代将軍の義教に至ってより深いものとなります。

興福寺の塔頭である大乗院の院主尋尊義教の子女たちを記した系図書きの中に、「宝鏡院殿 宇治大路腹と義教の側室として宇治大路氏の娘の名がみえます。(注11)

(注11)『大乗院寺社雑事記』長享2年〔1488〕3月晦日条)

この宝鏡院殿「日山理永尼」と言うそうです。(注12)

(注12)湯之上隆「足利氏の女性たちと尼寺」所収「付表 足利氏の女たち」、九州大学国史学研究室編『古代中世史論集』)

このように宇治大路氏は、一族の中より将軍家の側室を生み出し、外戚として早くから将軍の直臣団に加わった家柄であった訳ですね。(注13)

(注13)(注6)参照


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posted by 御堂 at 14:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史:コラム
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