BS日テレにおいて「王と私」(全63話)が現在放送されていますね。
私自身は以前、スカパーのLaLaTVで放送された際に視聴し終えているのですが、その際にまとめ切れなかった事、またBS日テレにて「女人天下」の視聴以降、すっかりハマってしまった父と母に分かり易い様に予備知識を作成しようと思うので、以下まとめてみました。
この「王と私」の時代背景としては、朝鮮王朝の初期にあたり、第6代国王で、
その間、
1.内侍府の成立
内侍府、恭愍王五年、改宦官職、設内詹事、内常侍、内侍監、内承直、内給事、宮闈丞、奚官令、後置内侍府、秩比開城府、判事一人、正二品、検校二十八人、同知事二人、従二品、検校三十二人、知事一人、正三品、検校三十八人、僉事一人、従三品、検校二十八人、同知事二人、正四品、同僉事二人、従四品、左承直二人、正五品、右承直二人、従五品、左副承直一人、正六品、右副承直一人、従六品、司謁一人、正七品、謁者一人、従七品、宮闈丞一人、正八品、奚官令一人、従八品、給事一人、正九品、通事一人、従九品、辛禑罷之、恭譲王復之、階三品
(『高麗史』巻77、百官志)
その職員構成を見ると、成立当初は、
- 内詹事
- 内常侍
- 内侍監
- 内承直
- 内給事
- 宮闈丞
- 奚官令
- 判事 1人…正二品相当
- 検校 28人…従二品相当
- 同知事 2人…従二品相当
- 検校三 32人…正三品相当
- 知事 1人…正三品相当
- 検校 38人…従三品相当
- 僉事 1人、従三品相当
- 検校 28人…正四品相当
- 同知事 2人…正四品相当
- 同僉事 2人…従四品相当
- 左承直 2人…正五品相当
- 右承直 2人…従五品相当
- 左副承直 1人…正六品相当
- 右副承直 1人…従六品相当
- 司謁 1人…正七品相当
- 謁者 1人…従七品相当
- 宮闈丞 1人…正八品相当
- 奚官令 1人…従八品相当
- 給事 1人…正九品相当
- 通事 1人…従九品相当
2.内侍府の職掌
やがて、朝鮮王朝が開かれると
定文武百官之制…(中略)…文武流品之外、別置内侍府為宦官職…(中略)…皆別其散官職事之号、不使雑于流品(『朝鮮王朝実録』太祖実録、太祖元年(1392)7月丁未(28日)条)
の様に、
これにより、
朝鮮王朝における
朝鮮王朝後期、
【内侍府】
掌大内監膳伝命守門掃除之任
大内(大内裏?)内の食事の監督、王命の伝達、守門・掃除に関する任務を管掌する
共一百四十員四都目
≪全部で140人。1年に4回、
○四品以下依文武官仕数加階三品以上則有特旨乃授
○四品以下は、文武官の勤務日数に準じて昇級させる。三品以上は、王の特旨があれば任命する
<原従功臣則例加至通訓>
<
長番及出入番者毎日給仕一
<出番亦給>
講所読書通給別仕二略通一粗通半不通削仕三
経書(儒教で特に重視される文献)を読ませて解釈試験を行い、「通」で及第すれば特別に2日分の勤務日数を加算し、「略」で及第ならば1日分、「粗」で及第ならば半日分とし、「不通」で落第した場合は、3日分の勤務日数を減算する
<誦亦同>
<経書暗誦試験でも同じ>
講四書中自願一書三処小学三綱行実並三処得通五者加階免学
四書(=『論語』・『孟子』・『大学』・『中庸』)のうち、自分の希望する1つの中から3か所、『小学』・『三綱行実』から合計3か所を解釈させ、「通」を5つ得た者は、品階を昇級させて試験を免除する
<年満三十五亦免>
<年齢が35歳に達しても免除とする>
○聴講日給別仕一毎朔一度講三処依上項給仕毎都目講者則七処誦者則八処倶通倶誦者六品以上則準職七品以下則守職四通三略以上者当受職則陞授其余給仕
○経書解釈試験日は、特別に1日分の勤務日数を加算し、毎月1回3か所を解釈させて、上項に依って勤務日数を加算する。毎回の都目政事において、経書解釈試験で7か所、経書暗誦試験で8か所を全て「通」で及第・暗誦した者は、六品以上ならば準職(品階は昇級せずに俸禄額のみを増やす事)、七品以下ならば守職(品階に相当官職が実際の自分の品階よりも高い状態の官職)に任命する。「通」が4つで「略」が3つ以上の者は、官職を受ける事になっていれば品階を昇級させて任命する。それ以外は、勤務日数のみを加算する
<雖六通七誦有粗則給仕>
<「通」で及第が6つ、暗誦合格が7つだとしても、「粗」が含まれれば勤務日数のみを加算する>
○尚膳二員従二品
尚醞一員正三品
尚茶一員正三品
尚薬二員従三品
尚伝二員正四品
尚冊三員従四品一鷹坊逓児二大殿薛里酒房対客堂上王妃殿承伝色薛里逓児止此
尚弧四員正五品大殿鷹坊弓房王妃殿酒房文昭殿薛里世子宮長番逓児止此
尚帑四員従五品大殿廂庫灯燭房多人薛里監農世子宮薛里逓児止此
尚洗四員正六品大殿掌器掌務火薬房司鑰房掌内苑王妃殿灯燭房文昭殿進止世子宮酒房嬪宮薛里酒房逓児止此
尚燭四員従六品大殿門差備王妃殿門差備掌務世子宮灯燭房逓児止此
尚烜四員正七品世子宮門差備各宮薛里門差備逓児止此
尚設六員従七品
尚除六員正八品
尚門五員従八品
尚更六員正九品
尚更(定員)6人、正九品相当。王、世子、妃嬪、大妃の日常の世話などの業務を管掌する
尚苑五員従九品≫
[増]大殿長番<無定数>出入番<四十二>
[増]大殿長番<定員は設けない>出入番<(定員)42人>
王妃殿出入番<十二>
王妃殿出入番<(定員)12人>
世子宮長番<無定数以大殿長番兼>出入番<十二>
世子宮長番<定員は設けない、大殿長番に兼任させる>、出入番<(定員)12人>
嬪宮出入番<八○各処上直小宦九十>
嬪宮出入番<(定員)8人、○各宮で上直する
3.まとめ
朝鮮王朝における
内侍府 の定員は140人- 職掌は16部門
- 二品階級の
尚膳 から九品階級の尚苑 まで59人 内侍 は、1年に4回、都目政事(毎年6月と12月に行われる官員の勤務評定)で人事査定がなされていた
※(関連)「王と私」観賞基礎ノート(4)―於乙宇同事件―
※(関連)「王と私」観賞基礎ノート(3)―内侍と王妃の愛―
※(関連)「王と私」観賞基礎ノート―内侍&宦官について―
※(参考)「大典会通 巻1 吏典【内侍府】」『大典会通』日本語訳(「The Korean Peninsula Blog」)
※(参考)矢木毅「高麗時代の内侍と内僚」『高麗官僚制度研究』
※(参考)朴孝信「高麗時代の『内侍』―その独自性と別称―」『駿台史学』19
※(参考)西川孝雄「高麗時代の『宦者伝』研究―立志人物の分析―」『愛知学院大学文学部紀要』34
この記事へのコメント