小学校で習った楽曲って、今でも自然に
- 我は海の子
白浪 の
さわぐいそべの松原に
煙たなびくとまやこそ
我がなつかしき住家 なれ- 生れてしおに
浴 して浪 を子守の歌と聞き
千里寄せくる海の気 を
吸いてわらべとなりにけり- 高く鼻つくいその
香 に不断 の花のかおりあり
なぎさの松に吹く風を
いみじき楽 と我は聞く
ましてや、それらの楽曲は題名からピンと来なくても、歌詞を見れば自然とメロディがすぐイメージできちゃうって感じなものが多い気がします。
『京都新聞』平成22年(2010)7月14日付朝刊に掲載された「凡語」を読んで知ったのですが、私たちに馴染み深い楽曲の数々、すなわち文部省唱歌が明治43年(1910)7月14日に誕生して、今年で100年を迎えたそうです。
文部省唱歌とは、明治43年(1910)から昭和19年(1944)に至る期間に文部省が編纂した、尋常小学校、高等小学校および国民学校の唱歌、芸能科音楽の教科書(下記参照)に掲載された楽曲の総称である。(なお、1900年代までの翻訳唱歌―例えば「蝶々」や「庭の千草」「旅泊」「蛍(蛍の光)」など)は文部省唱歌に含まれていません)。
- 『
尋常 小学読本 唱歌 』=明治43年(1910) - 『尋常小学唱歌』=明治44年(1911)~大正3年(1914)
- 『高等小学唱歌』=昭和5年(1930)
- 『新訂尋常小学唱歌』(第1学年用~第6学年用)=昭和7年(1932)
- 『新訂高等小学唱歌』(男子用・女子用)(第1学年用~第3学年用)』=昭和10年1935)
- 『ウタノホン』上、『うたのほん』下(国民学校初等科1、2年生)=昭和16年(1941)
- 『初等科音楽1~4』(国民学校初等科3~6年生)=昭和17年(1942)~昭和18年(1943)
- 『高等科音楽1』(男子用・女子用)=昭和19年(1944)
楽曲の全てが日本人による新作ですが、当時は作詞者・作曲者の名は匿名とされていたので、戦後になってこう呼ばれるようになったのです。
まず最初に誕生したのが、『尋常小学読本唱歌』というもので、明治43年(1910)に文部省が初めて編集した尋常小学校向けの唱歌(教科)の教科書になります。
当時の国語読本『尋常小学読本』の韻文教材27首(下記参照)が選ばれて曲がつけられたためこのような名称が付けられました。
収録された全曲については、『尋常小学読本唱歌』と並行して文部省が編纂した『尋常小学唱歌』に改めて再録され、『新訂尋常小学唱歌』や国民学校期に編纂された芸能科音楽教科書『ウタノホン(うたのほん)』へも移行され、さらには戦後の検定教科書への移行の際も引き続き収録され続け、現在に至っています。
『尋常小学読本唱歌』に掲載された文部省唱歌
- カラス(烏)
- ツキ(月)
- タコノウタ(紙鳶の歌)
- こうま(小馬)
- かへるとくも(蛙と蜘蛛)
- ふじの山(富士山)
- とけいのうた(時計の歌)
- 母の心
- 春が來た
- 蟲のこゑ(虫の声)
- 日本の國
- かぞへ歌
- ゐなかの四季(田舎の四季)
- 家の紋
- 何事も精神
- たけがり
- 近江八景
- 舞へや歌へや
- 三才女
- 水師營の會見(水師営の会見)
- われは海の子(我は海の子)
- 出征兵士を送る
- 同胞こゝに五千萬
- 鎌倉
- 國産の歌
- 卒業
- アサガホ(朝顔)
現在の『小学校学習指導要領』によれば、
○第1学年
- うみ(文部省唱歌)
- かたつむり(文部省唱歌)
- 日のまる(文部省唱歌)
- ひらいたひらいた(わらべうた)
- かくれんぼ(文部省唱歌)
- ◎春がきた(文部省唱歌)
- ◎虫のこえ(文部省唱歌)
- 夕やけこやけ
- うさぎ(日本古謡)
- 茶つみ(文部省唱歌)
- 春の小川(文部省唱歌)
- ◎ふじ山(文部省唱歌)
- さくらさくら(日本古謡)
- とんび
- まきばの朝(文部省唱歌)
- もみじ(文部省唱歌)
- こいのぼり(文部省唱歌)
- 子もり歌(日本古謡)
- スキーの歌(文部省唱歌)
- 冬げしき(文部省唱歌)
越天楽 今様 (歌詞は第二節まで)(日本古謡)- おぼろ月夜(文部省唱歌)
- ふるさと(文部省唱歌)
- ◎われは海の子(歌詞は第三節まで)(文部省唱歌)
では最後にもう一度、「われは海の子」の歌詞を紹介します!
- 我は海の子
白浪 の
さわぐいそべの松原に
煙たなびくとまやこそ
我がなつかしき住家 なれ- 生れてしおに
浴 して浪 を子守の歌と聞き
千里寄せくる海の気 を
吸いてわらべとなりにけり- 高く鼻つくいその
香 に不断 の花のかおりあり
なぎさの松に吹く風を
いみじき楽 と我は聞く丈余 のろかい操 りて行手 定めぬ浪 まくら百尋 千尋 の海の底
遊びなれたる庭広し幾年 ここにきたえたる
鉄より堅きかいなあり
吹く塩風に黒みたる
はだは赤銅 さながらに浪 にただよう氷山も来 らば来 れ恐れんや
海まき上 ぐるたつまきも起 らば起 れ驚 かじ- いで
大船 に乗出して
我は拾わん海の富
いで軍艦に乗組みて
我は護 らん海の国
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