映画「武士の家計簿」

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平成22年(2010)公開の映画として「武士の家計簿」を製作するとの発表がありました。

原作となるのは、磯田道史氏著『武士の家計簿―「加賀藩御算用者」の幕末維新―』(新潮新書)。磯田氏が神田の古書店で偶然発見した『加賀藩猪山家文書 入払いりばらい帳・給禄証書・明治期書状他 天保〜明治 一函十五万円』(『金沢藩士猪山家文書』)に残されていた詳細な「入払帳」、すなわち家計簿の記述を基に、贅沢とは無縁の生活を送る御算用者ごさんようもの(=会計処理の専門家)が、算盤そろばん1つで時代を生き抜いた生活ぶりを考察した作品です。

幕末・維新期を生き抜き、加賀前田家の下級武士で代々「御算用者」として藩の財政に携わってきた財政に携わってきた

猪山家の家計簿は、天保13年(1842)7月から明冶12年(1879)5月まで37年2か月間も書き続けられたもので、天保期の当主・綏之やすゆきから信之のぶゆき直之なおゆき成之しげゆきに至る4代の家計状況がつぶさに判ります。

製作発表では直之を主人公に充てて、

天保の大飢饉などで藩の財政状況が悪化の一途を辿る社会情勢を背景に、家財道具を処分しての倹約生活を余儀なくされながらも、 誠実に生きる夫と明るく献身的に家庭を切り盛りする妻の姿を軸に、一致団結して力強く生きていく様に焦点を当てる
といったストーリー展開をするような感じですね。

主な配役として、

  • 猪山直之(加賀前田家御算用者、御蔵米勘定役を勤めた後、藩主・前田斉泰側近である御次執筆役に抜擢される)=堺雅人さん

  • 直之の妻・お駒(町同心・西永与三八の娘)=仲間由紀恵さん

  • 直之の子・直吉(のち成之、父・直之の生き方に反発し、軍務畑に進む)=伊藤祐輝くん→大八木凱斗くん

  • 直之の父、信之(藩主・斉泰と徳川第11代将軍・家斉の娘・溶姫の婚礼の準備役を命ぜられた事=加賀藩邸に建てられた溶姫御殿の正門=現在の東京大学赤門の話=が常々の自慢)=中村雅俊さん

  • 直之の母、お常=松坂慶子さん

  • 信之の母、直之の祖母、おばば様=草笛光子さん

  • 成之の妻、お政(直之の姪=直之の姉の娘)=藤井美菜さん


  • 他に
  • お駒の実父、西永与三八(町同心で直之の剣術の師)=西村雅彦さん


  • 加賀前田家の重役、奥村丹後守栄実(加賀八家の1つ、奥村家第10代当主)=宮川一朗太さん

  • 加賀前田家の役人、安部忠継=小木茂光さん

  • 加賀前田家の奉行、重永=茂山千五郎さん

  • 第12代藩主、前田斉泰=山中崇さん

  • 最後の(第13代)藩主前田慶寧=井手浩一朗さん


  • 猪山家が借財する商人、新保屋清次郎=谷口高史さん


  • 大村益次郎=嶋田久作さん(新政府軍の軍務指令官、成之を新政府軍の会計方に迎える)
が演じられます。

この「武士の家計簿」、まずは石川県内の映画館で11月27日から先行上映され、全国公開は12月4日からとの事。

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― ◇ ◇ ◇ ―

武士の世界では算術などは商人がやるものとして勘定方や会計方の役勤めをする者に対し「算勘しわき者」といった侮蔑の表現をするなどして軽視していました。

しかし加賀前田家では、数学や算術を大いに奨励していた風潮があった様です。

そうした加賀前田家「御算用者」として務めていた猪山家は享保年間(1716〜1736)に陪臣の身分から直参に出世します。以来5代にわたって幕末維新期を経て廃藩置県加賀前田家が消滅するまでその地位を、世襲ではなく能力によって維持したのです。

因みに信之は文政10年(1827)、徳川幕府第11代将軍・家斉の娘・溶姫やすひめ前田家当主・斉泰に輿入れした際の「婚礼方御用」(=婚礼の進行役)を務めています。

その子・直之は殿さまの御次執筆役(=秘書)を勤め、さらに直之の子である成之は江戸藩邸において「御主殿様御用人衆執筆加役人」(=奥向きの御用秘書)を務めているんですね。

幕末維新期の動乱時、新政府方についた加賀前田家に対し、「徴士」が召集されます。

「徴士」とは、新政府が慶応4年(1868)1月から明治2年(1869))6月までに「諸藩ノ士及都雛有才ノ者公儀ニ執リ抜擢セラル則徴士ト命ズ」という形で、諸藩や一般庶民から有能な人材を召集して国政をあたらせた者をさします。

成之は藩命で、慶応4年(1868)7月、その「徴士」として新政府に出仕したところ、その能力を新政府の軍務官であった大村益次郎に認められ、会計方に推薦されます。

ちょうど、大村益次郎の愛弟子で大村暗殺未遂事件の際に殺害された安達幸之助が同じ加賀前田家出身だった事もあって、その才を聞いていた様ですね。

大村の下で、成之戊辰戦争の期間中、新政府軍の後ろの備え=兵站を実質的に差配します。

大村の死後、成之は「海軍掛」となります。

同じ頃、直之猪山家も東京に上京し、前田家の家宰として「御家令席主簿」、つまり会計方の最高責任者となっています。

明治7年(1874)の時点で、成之は海軍省出納課長として年俸1235円(現在の3600万円相当)をもらっています。

代々、猪山家は「切米40俵」に過ぎなかったのが、家柄ではなくその能力で立身出世を成し遂げた結果でした。

― ◇ ◇ ◇ ―

なお、成之は自分を推薦してくれた大村の恩顧に報いようと、自身が発起人となって完成をみたのが、靖国神社に建つ大村益次郎像なんですよね。

― ◇ ◇ ◇ ―

※(参照)仕事は経理、小遣い6000円 東京で加賀藩士の家計簿見つかる 下級武士の暮らし伝え 磯田慶大非常勤講師が分析 2代37年、克明に記録(北國新聞2003-04-03)→
※(参考)「知るを楽しむ」 拝見・武士の家計簿→


   


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posted by 御堂 at 23:30 | Comment(0) | TrackBack(1) | 歴史:ドラマ
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